大人の科学、シンセサイザークロニクルのSX-150

1970~1980年代にワルターカーロスや冨田勲などで魅了し、1990年にはYMOで注目されたモーグシンセサイザという電子楽器があります。楽器というには、その大半の部分がパッチボードという代物ですが、とても魅力的な音がしていました。学研から、別冊大人の科学として、超簡単なアナログシンセサイザSX-150が付録についた「シンセサイザークロニクル」が発売になっています。付録の組み立てはネジを締めるだけですが、アナログシンセサイザーの「きも」であるレゾナンスがちゃんと使えます。

画像モーグシンセサイザーは、現在のようなデジタルで設定や発生するものではなく、キーボードやシーケンサから出た1オクターブ/Vのアナログ電圧でVCO,VCF,VCAなどを制御します。キーボードは、鍵盤というよりも、制御用の電圧を発生するコントローラとしての役割を果たします。電圧は、1Vの変化で1オクターブ変化するように設計されており、キーボードの半音は、その12分の一の電圧となります。その電圧とトリガにより、電圧制御発振器(VCO)、電圧制御フィルタ(VCF)、電圧制御増幅器(VCA)などを制御します。その他に、キーボードの代わりに一定の順序を送り出すシーケンサー、主に音の強さを制御するエンベロープジェネレータなどがあります。
電子楽器なので、音階を出すことを考えた場合、キーボードの電圧でVCOを制御すれば音程を出すことが出来ると言うことになりますが、正弦波、方形波、三角波、のこぎり波などを切り替えてみても音の単純さにすぐに飽きてしまいます。もちろん、その出力を、エンベロープジェネレータの信号でVCAで処理すれば、音の立ち上がりや余韻によりいろいろな印象に変えることは出来ます。しかし、モーグシンセサイザーの音がもっともそれらしく聞こえるのは、VCFによる音の加工ではないかと思います。
VCFは、ローパスフィルタとしたとき、キーボードからの電圧によりカットオフ周波数を変化させることが出来ます。さらに、レゾナンスの調整によりカットオフ周波数付近を強調することが出来ます。このレゾナンスが、共鳴や幅のある音を作りだすことが出来ます。
シンセサイザーで、心地よく響く音は、ほとんどがこのレゾナンスを使って音作りをしていると思います。

書籍「シンセサイザークロニクル」は、付録ばかりでなく、読み物としても良くまとめられていて、その時代で使われたシンセサイザーとか、シンセサイザーにかかわった音楽家などが紹介されています。マニアでないと知らないようなことがまとめられており、付録だけでない読み物としての価値があると思います。

画像付録には、簡単ではあるが要点は落とさないものを開発したようで、基板1枚に仕上がったものが添付されています。この1枚の基板を、プラスティックのケースにネジで止めていくのがおもな組み立てとなりますが、購入サイトの評価に書かれているように、ネジを強く締めすぎるとネジが取れてしまうことがあるようなので、注意深く組み立てる必要があります。

プラスティックのケースの文字の刻印や、ツマミがシンセサイザーらしさを表しているので、見た目は市販のシンセサイザーに見劣りしません。ただ、キーボードは、簡素化するために、電圧を入力するスライダー(可変抵抗器)となっており、タッチ棒をスライダーに当てることで音階を出すことになるので、音階を弾くことは容易ではありません。
しかし、この値段でまとめ上げるためにはこのような方法になってしまうのだろうと思います。
シンセサイザーを小さくまとめると、何もかもが基本ばかりになってしまいがちですが、それではシンセサイザーの面白みがなくなってしまいます。このシンセサイザーでは、シンセサイザーの特長であることは残しているようで、先にあげたVCFのレゾナンスはスイッチ1個ながら残されています。
このシンセサイザーで遊んでいるほとんどの時間は、このVCFを操作していることと思います。

画像このシンセサイザーを見て、曲を弾くことはまず考えないだろうと思います。スライダーは、音程を思ったように出すことは難しく、音程が高いときと低いときでどのように音が変わるかを見比べる程度しか出来ないでしょう。書籍に音色の設定例があるようですが、効果音や聞いたことのある音を出すことが主なものです。
キーボード(スライダー)でVCFのカットオフ周波数をコントロールすることはできない接続になっており、VCFの制御はエンベロープでのみ可能となっています。エンベロープは、キーボードをタッチしたときのトリガにより、立ち上がりと減衰を調整することができるようになっていますが、その変化によりVCFのカットオフ周波数の変化によりレゾナンスの具合を変化させることができるようになります。この効果によって、効果音のほとんどが作られるようです。
このシンセサイザーは、そのような効果音を出すことができるように、パッチ配線がすでにされているということになります。

アナログシンセサイザーSX-150は、シンセサイザーを小さくして単なる「音階発生器」とすることなく、シンセサイザーのもっとも面白そうな音作りに合うように組み立てが決められ、その機能は最小限ながら残されているものということが出来ます。デジタルシンセサイザーでは、出来なくなってしまったこのような機能が楽しめるのが、このシンセサイザーのすばらしいところです。



大人の科学マガジン別冊 シンセサイザー・クロニクル (Gakken Mook 別冊大人の科学マガジン)
学習研究社
2008-07-30

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